調査・研究

2016年更年期と加齢のヘルスケア学術集会(平成帝京大学)発表より。

中高年女性のための自律神経を整える呼吸法・エクササイズ

BREATHING METHOD FOR PREPARING AUTONOMIC NERVES FOR MENOPAUSAL WOMEN

【執筆者プロフィール】

永田京子(Kyoko Nagata)

NPO法人ちぇぶら代表理事 更年期フィジカルケアインストラクター

NPO法人更年期と加齢のヘルスケア メノポーズ・カウンセラー

(NPO Chebura in Japan / Representative Director)

HP:http://www.chebura.com

 

1983年生。兵庫県出身。埼玉県所沢市在住。演劇活動後、身体の使い方に興味を持ち、整体・経絡・アロマ・リフレクソロジーを学ぶ。ピラティス指導者、産後ケアのインストラクターとして活動する中で、40代の受講者たちの声と自身の母が更年期障害でうつになった経験から、更年期を迎える女性をサポートすることを目的とした「NPO法人ちぇぶら」を設立。 身体のケアと更年期の知識の普及に務める。2児の母。

調査協力:星名弘恵(Hoshina Hiroe)NPO法人ちぇぶら副代表 更年期ライフデザインファシリテーター、NPO法人ちぇぶらの講座をご受講のみなさま。

 

【概要】運動への重要性は広く認識されているが、運動習慣がある者の割合は更年期女性では16.7%〜20.7%(※1)と非常に低い現状がある。体を動かし整えることは、全身持久力の向上、基礎代謝の維持、生活習慣病の予防、将来の健康寿命を延ばす、精神の安定など、ココロとカラダの健康面だけでなく、更年期症状の緩和効果や日々の生活を快適にするためにも欠かせないものだ。一方で上記に示した運動習慣がある者の割合が低いことからわかるように、重要だと認識しながらも、生活の中で運動が後回しになっている現状がある。女性にとって大きな健康の節目である更年期から運動習慣を持つことは、「今」だけでなくこれからの生活の質や健康寿命に大きく関わってくる。この発表では、更年期を取り巻く社会背景と共に、運動のための時間をわざわざ確保しなくても、自宅やオフィスで取り組め、さらに中高年女性のマイナートラブルを予防・改善する体を整えるエクササイズを紹介する。

◉キーワード:フィットネス,運動,更年期ケア,女性の健康

◉第一章:中高年女性の運動習慣と健康の質、/◉第二章:運動によって更年期症状に変化はあるのか/◉第三章:運動が更年期症状緩和に効果的なのはなぜか。/◉第四章:自律神経を整える呼吸法

◉はじめに

体を動かし整えることは、精神と身体の健康面だけでなく、更年期症状の緩和効果や日々の生活を快適にするためにも欠かせないものである。更年期の知識と運動による対策を伝えるNPO法人ちぇぶらは、セミナー参加者67名に対してエクササイズを提供し、運動前後に簡略更年期指数(※3)をチェック。中高年女性が自律神経を整える呼吸法やエクササイズによって更年期症状に変化があるかを研究した。結果、エクササイズ後に、簡略更年期指数が大きく下がったことがわかった。この発表では、中高年女性を取り巻く社会背景と共に、運動のための時間をわざわざ確保しなくても、自宅やオフィスで取り組め、さらに中高年女性のマイナートラブルを予防・改善する体を整えるエクササイズを紹介する。

 

◉第一章:中高年女性の運動習慣と健康の質

運動への重要性は広く認識されているが、運動習慣がある者の割合は更年期女性では16.7%~20.7%(※1)と非常に低い現状がある。体を動かし整えることは、全身持久力の向上、基礎代謝の維持、生活習慣病の予防、将来の健康寿命を延ばす、精神の安定など、ココロとカラダの健康面だけでなく、更年期症状の緩和効果や日々の生活を快適にするためにも欠かせないものだ。一方で上記に示した運動習慣がある者の割合が低いことからわかるように、重要だと認識しながらも、生活の中で運動が後回しになっている現状がある。2013 年文部科学省「体力・スポーツに関する世論調査」より、「運動不足を感じているか」という問いには、更年期女性では80.3-82.5% (※2)がYESと回答している。ある調査では、運動しない理由は、40代~50代の回答の1位が「忙しくて運動をする時間がない」、2位が「面倒だから」、3位が「運動、スポーツが好きではない」であった。60代以上は「健康状態や足腰があまり良くないため、あえて運動を控えている」という割合が他の世代の倍であった。女性にとって大きな健康の節目である更年期から運動習慣を持つことは、「今」だけでなくこれからの生活の質や健康寿命に大きく関わってくることがわかる。

 

◉第二章:運動によって更年期症状に変化はあるのか。

「更年期」というと一般的には、“その時期”の精神と身体の健康の不調というイメージを持つ傾向があるが、 その時期だけでなく“将来の健康の質”にとっても非常に大切な節目である。そこで、NPO法人ちぇぶらは「更年期をチャンスにする」というコンセプトで、更年期をきっかけに心身と向き合う機会を提供している。具体的には、更年期の健康に関する正しい情報提供と、更年期症状の対策エクササイズの提供である。40代~50代の運動しない理由の回答で上位に上がる「忙しくて運動をする時間がない」「面倒だから」「運動、スポーツが好きではない」という人でも取り組めるように、エクササイズのための時間をわざわざ確保しなくても、自宅やオフィスで行えるものを研究・開発・普及している。ここでは、簡単なエクササイズによって中高年女性に多いマイナートラブルを予防・改善する効果を見ていきたい。

 

調査方法: NPO法人ちぇぶらのセミナー参加者合計67名に対して運動前と運動後に簡略更年期指数(※3)をチェック。運動によって更年期症状の体感値に変化があるかどうかを、簡略更年期指数を使って調査。対象年齢=35歳~55歳の女性(プレ更年期・更年期女性)期間:2016年10月1日~10月22日

 

プレ更年期・更年期女性39名に、20分間の2.5METs程度の椅子に座ったままできる程度の軽い運動を行った。その結果、身体面・精神面ともに、平均して全ての簡略更年期指数が下がった。中でも「腰や手足が冷えやすい」「怒りやすく、イライラする」「寝つきが悪い・眠りが浅い」という項目は大きく下がったことがわかる。一部の受講者からは「気持ちが安定している」「睡眠薬の服用量が減った」という報告が届いた。

 

60分間の7.0 METs程度の強度の高い運動(有酸素運動・バランスボールエクササイズ)を行った場合、同様に簡略更年期指数の平均値が下がった。詳細項目では、顔がほてる、汗をかきやすいという指数は上がっているが、これは更年期症状によるものではなく代謝が良くなったものと考えられる。その他の簡略更年期指数においては平均して下がっており、特に「寝つきが悪い、眠りが悪い」という項目と「怒りやすくイライラする」という項目においては、大きく改善されたことがわかる。継続している受講者の中からは「体力がついたと実感する」「20年間腰痛持ちだったが、それが良くなり生活が変わった」という報告が届いた。

 

 

◉第三章:運動が更年期症状緩和に効果的なのはなぜか

更年期の症状というのは、女性ホルモンの急低下による症状と、自律神経の乱れのダブルパンチで起こる。更年期の症状は200から300種類あるが、症状の体感値は個人差が大きい。自律神経とは、私たちの身体を興奮させたり、リラックスさせたりする神経のことである。運動すると心臓の拍動は促進され、体温が上がり、汗をかく。これは交感神経という興奮する神経が優位に立っている状態である。運動をやめると、心臓の拍動は抑制され、体温が下がり、汗もひく。副交感神経というリラックスする神経が優位になっている状態だ。自律神経と運動は密接に関わっており、運動という行為はある意味では強制的に自律神経の交感神経・副交感神経を切り替え、整える効果がある。よって、運動という行為は自律神経の乱れが原因で起こる更年期症状を緩和させる効果があると考えられる。

運動は身体にいいということは頭では分かっていても、日常的に運動をする層は少ない。先述したが、更年期女性では「運動不足を感じているか」という問いには、80.3-82.5% (※2)がYESと回答。しかし、運動習慣がある者の割合は更年期女性では16.7%~20.7%(※1)と非常に低い現状がある。

40代~50代の運動しない理由は、1位「忙しくて運動をする時間がない」、2位が「面倒だから」、3位が「運動、スポーツが好きではない」だ。60代以上の運動しない理由のトップは「健康状態や足腰があまり良くないため、あえて運動を控えている」である。忙しさを理由に自分の体のことを後回しにしてきたことで、運動したくてもできない身体になっている現状は人生の質を大きく左右するばかりか、将来の介護や生活習慣病など社会の大きな問題ともなっている。更年期に身体を整える習慣を身につけることは、「今の快適さ(更年期症状含む)」のみならず、「将来の健康」に大きく関わることである。

 

◉第四章:自律神経を整える呼吸法

寝付きが悪い、夜中に目をさます。更年期にはこのような睡眠に関する悩みを訴える方も少なくない。深夜のホットフラッシュで目が覚める、手足の冷えがひどくて眠れない、夜中の頻尿で起きてしまうなど、他の症状と重なるケースも。本人は辛いのに周囲に理解してもらえない二重のストレスもある。ここでは、短時間でも質の高い睡眠が得られるような、リラックスできる自律神経を整える呼吸法を紹介する。

 

 

【自律神経を整える呼吸法の手順】①腹式呼吸で鼻から大きく息をすいながら、軽く上を向く。②口から細く長く息を吐き出しながら、あごを引くように斜め下を向く。二重あごになるような状態を作る。①と②を繰り返し行う。立った状態や座った状態、また横になりながらでも行うことができる。 我々の神経は背骨の中を通っており、自律神経の副交感神経というリラックスさせる神経が頚椎と仙骨から出ている。その部分を呼吸と連動させて動かす事によって、短時間でも質の高いリラックス効果を得ることができる。この呼吸法は、自分の身体一つあればでき、運動のための時間をわざわざ確保しなくても取り組むことができる。例えば、電車に乗っている時、仕事の合間、家事の合間でも取り組める。眠れない時だけでなく、イライラした時や不安感に悩まされる時にも試してみてほしい。

 

◉おわりに

中高年女性が自律神経を整える呼吸法やエクササイズに取り組むことによって、簡略更年期指数が下がり、更年期症状の体感値が緩和されることがわかった。また、女性にとって大きな健康の節目である更年期から運動習慣を持つことは、「今」だけでなくこれからの生活の質や健康寿命に大きく関わってくる。運動のための時間をわざわざ確保しなくても、自宅やオフィスで取り組め、さらに中高年女性のマイナートラブルを予防・改善する身体を整えるエクササイズは、人々の健康と幸せの貢献に大きく期待される。中高年女性の健康に対する意識・身体の改革でより豊かな社会作りに貢献するよう、これからも活動を進めていく。

※1.厚生労働省平成 25 年 国民健康・栄養調査結果の概要より  ※2.2013 年文部科学省「体力・スポーツに関する世論調査」

※3.引用文献)
小山嵩夫:更年期・閉経外来-更年期から老年期の婦人の健康管理について-,日本医師会雑誌109:259−264,1993